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はじめてひとを好きになったときの2月14日。
あたしと彼は、隣同士の席でした。
いつも、ふたりできゃあきゃあ騒いでいるのに、
あたしはなぜか話しかけられなくて、
彼も何も言わなくて、
だけど、休み時間になっても席をたつことができなくて、
ただ黙ってふたり座っていたのを、覚えています。

次の日。
あたしは学校にチョコレートを持っていきました。
箱の中にたくさんのブランデー・ボンボン。
あたしは、周りの席の子たちに配りました。
男の子にも、女の子にも、笑いながら。
「もらいものなんだ~」
最後の最後に、彼にも渡しました。
冗談っぽく、でも人生最大の勇気を秘めて。
「ありがとう」
彼は、ちっぽけな勇気のかけらを受け取ってポケットにしまい、
そのあと、それを取り出して眺め、
それからどういうわけか、内ポケットにしまいなおしました。
そんなとこに入れたら、チョコレート溶けちゃうよ。
その言葉を、あたしはどうしても口に出せませんでした。
彼の内ポケットにしまわれたチョコレート。
彼のいちばん近くで、温められている、小さなかけら。
あたしの小さな勇気。
もう、何にも、言えませんでした。

その次の日。
彼は、少し拗ねた声で、
「昨日、チョコレート溶けて、大変だった」
と話しかけてきました。
「当たり前だよ、内ポケットなんか入れたら」
あたしは、笑いました。
溶けてしまったチョコレート。内ポケットのチョコレート。
あたしたちは、ばかみたいに笑いました。
笑いが収まるたびにふざけあって、また笑いました。
笑いすぎて、その日は授業をまともに聴けないほどに笑いました。
「コイツ、チョコレート好きだからな」
彼の友達も笑いました。
彼は、ホワイトチョコが好きだと言いました。
あたしは笑いながら、もっと早くに言ってくれればいいのにって、
こっそり後悔しました。

その日の帰り道。
いつものように友達とお喋りしながら、
あたしはとてもいい情報を手に入れたことに気付きました。
そうか、ホワイトチョコが、好きなんだ。
友達と別れた後、駄菓子屋さんに飛び込んで、
おおよそ本気っぽくない、安物のホワイトチョコレートを買いました。
お洒落な外国製のボール紙に、冗談のようなおちゃめなメッセージ。
好きですなんて書けなくて。
そんなの今さら言えなくて。
だって、隣の席のおもしろい女の子って肩書きを失ってしまったら、
そのあとあたしはどうすればいいの?
気付いてくれなくていいのです。
だけど、だけどどうか、気がついてください。
こんなにきれいに結んだリボンに、気持ちを託して。

金曜日。
「ねぇ、かばん、貸して?」
どうしても、冗談ででも、手渡すことができなくて、
あたしは休み時間に、彼に言いました。
訝しがりながら彼がくれた、くしゃっとしたスポーツバッグに
あたしは似つかわしくないかわいい包みを雑にぽいっと放り込んで、
彼に返しました。
彼は、返された自分のバッグの中を覗き込んで、
「訳、わかんないことするヤツだな…」
その日の帰りに、彼の友達が、彼に、遊びに行こうと誘ったら、
彼は、今日は部屋を片付けるから、と言って
珍しく、そそくさと帰っていったのを、覚えています。

それから、あのチョコレートは、どうなってしまったのでしょうか。
はっきりとしたことを何も言えないまま、聞けないまま、
やがて席かえで席が離れて、
そのうち卒業して、
月日が流れて、
あたしは、
今も、
こんなにちっぽけな思い出だけを
大切に大切に
内ポケットにしまいこんでいるのです。
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