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次の日。申し訳なさそうに、カナは2本のビニール傘を僕に手渡した。
「ごめんね、傘、昨日、壊しちゃって。これ、新しいの。使って」
曲がっていた2本の傘の骨が、見事にポキリと折れていた。
こんな壊れた傘、わざわざ持ってくることもないだろうに。
新しい傘も、律儀なまでに同じ透明のビニール傘。わざわざ、いいのに、そんなの。
「いや、いいよ。もともと壊れかけだったし」
「でも」
「じゃあ」
僕は不意に、昨日のカナの小さな冷たい手を思い出す。
「じゃあ、また君が傘を忘れたときには、この新しい傘を使うよ」
なんて気障なことを言ったものだろう。顔から火が吹き出そうだ。
だけどカナは、きっと僕より頬を赤くして、はにかんだ。

それから、僕はカナと親しくなった。
クラスメイトとして、だけど。
僕の胸の中には、横顔のカナよりたくさんの、僕のほうを向いたカナが詰まってきていた。
くしゃっとした笑顔、僕が意地悪なことを言うと少し下唇を突き出す癖、失敗したときにチラッと見せる赤い舌、いたずらっぽくくるくると動く瞳。
それだけじゃあない。たくさんの言葉たち、笑い声、僕のノートのすみっこに勝手に書いてあった落書き、貸してくれたCDや、全てが。
いっぱい、いっぱい詰まりすぎて、はちきれそうだ。
はちきれそうだったんだ。
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